Editorial / Commentary
公開日・更新日:2026.10.03
AI時代にこそ店舗が稼げる?これからのフランチャイズ
店舗だから稼げるわけではありません。ただし、文章・画像・コードなどのデジタル業務は生成AIによる効率化や価格競争の圧力を受けやすく、接客・施工・介助など物理的な現場価値はAI単体では代替しにくい可能性があります。AIへの曝露と失業、代替しにくさと利益を分け、本部のAI活用と運営条件を確認することが大切です。
生成AIが文章、画像、コード、資料、分析まで作る時代に、事業を始めるならデジタルビジネスとリアルビジネスのどちらが有利になるのでしょうか。「AIで仕事がなくなるなら店舗へ」という考えは分かりやすい一方、店舗の利益を決める費用や需要を飛ばしてしまいます。
この記事は、2024〜2025年に公表された研究を手がかりに、これからのフランチャイズ選びを考えるEditorialです。研究が示した職業の変化と、日本の店舗経営への示唆を分けて読みます。個別ブランドの収益性や、2026年時点の技術全体を測定した記事ではありません。
AIが最初に変えるのは「デジタルで完結する仕事」か
業務の入口から納品まで画面の中で完結する仕事は、生成AIを組み込みやすいと考えられます。ライティング、バナー・画像制作、簡易Web制作、資料作成、一部のコーディング、データ整理などです。定型的なSaaS運用や代行業務、実行支援を伴わない定型的な助言も、工程を分けて検討する対象になります。
たとえば、文章を一から書く工程が下書きの確認に変われば、同じ成果物を作るための時間が短くなる可能性があります。発注者が自分で試せるようになれば、従来の納品価格に見直しを求めることも考えられます。これは本記事の事業上の推論であり、列挙した仕事が消える、価格が一律に下がるという研究結果ではありません。
むしろ、顧客の事情を理解する、正しさを確かめる、成果物を現場で実行する、結果に責任を持つ仕事まで同時に消えるとは限りません。効率化で提供量が増えたり、別の需要が生まれたりする可能性もあります。起業の判断では「AIが作れるか」だけでなく、顧客が何に対価を払うのかを問い直す必要があります。
生成AIは「高スキルの仕事ほど安全」という前提を崩した
ここでいうAIへの曝露とは、仕事を構成する作業がAIの影響を受けうる度合いです。失業の確率や、職業全体が自動化される割合と同じではありません。各資料では対象技術・国・指標が異なるため、数値を横並びの予測として比べないことも重要です。
ILO:仕事の消滅より、作業の変化を見る
ILOの2025年更新は、世界の労働者の約4人に1人が、何らかの生成AI曝露を持つ職業に就くと推計しています。事務職の曝露が高く、多くの職業では人の入力が残るため、置換より仕事の変容が有力という整理です。2025年初めの技術を基にした潜在的曝露で、実際の失職数ではありません。
この記事で言えるのは、専門職か店舗の仕事かという二択より、職業の中で変わる作業と残る作業を見る必要がある、ということです。「4人に1人が失業する」とは言えません。
OECD:学歴や職種だけで安全を決められない
OECDの2024年論文は、AIが非定型の認知作業にも影響し、高等教育を受けたホワイトカラーも変化に直面すると整理しています。主要分析は欧米22か国の労働力調査で、日本の店舗FCを対象とした研究ではありません。過去の雇用分析は2012〜2022年を扱い、生成AI普及後の長期結果を示すものでもありません。
読み取れるのは、「高スキルならAIの影響を受けない」と決められないことです。曝露が高いことを職業の消滅や自動化確率に置き換えることはできません。
IMF:補完と代替の両方がある
IMFの2024年1月の解説は、先進国の仕事の約60%がAIの影響を受けうるとしています。影響には、生産性を高める補完と、人が担う主要作業を代替する側面の両方があります。生成AIだけに限定したILOの指標とは範囲が異なります。
事業を選ぶ際には、AIに置き換えられる部分だけでなく、AIを使って価値を高められる部分も見るべきでしょう。「先進国の仕事の60%がなくなる」や、日本のFCの利益が増えるとは言えません。
Brookings:情報作業と物理作業を分ける
Brookingsの2024年10月の報告は、米国の職業・作業データとGPT-4の評価を用い、プログラミング、文章作成、分析などへの影響を論じています。当時の生成AIは主に情報を扱う、身体を持たない技術と整理し、ロボティクスの大きな進歩がなければ物理作業への影響は相対的に小さいとしています。
これは現場価値を考える手がかりです。ただし、2024年の分析を現在のロボット技術全体へ一般化したり、「店舗は永久に代替されない」と読んだりはできません。以下の業態整理も、研究がFCの優劣を実証した結果ではなく、編集部による応用です。
店舗ビジネスはAIに強いのか
重要なのは、店舗という建物があることより、価値提供の核心が現実世界にあるかです。画面上で作成できる助言と、顧客の家で汚れを落とす作業は違います。問い合わせの回答と、実物の状態を確認して責任を持って取引することも同じではありません。
次の表は、仕事を情報処理と現場の実行に分けるための論理整理です。AI導入効果の測定結果、業態ランキング、個別企業での導入実績を示す表ではありません。実際に任せられる範囲は、設備、品質基準、顧客との約束によって変わります。
| 業態 | AIで効率化を検討しやすい部分 | AI単体で代替しにくい現場価値 |
|---|---|---|
| 飲食 | 集客文案、発注判断の補助、求人、メニュー案 | 調理、対面接客、現場の衛生管理 |
| 買取 | 相場情報の整理、CRM、問い合わせの補助 | 実物査定、対面接客、商品の受け渡し・物流 |
| 清掃 | 見積もりの下書き、日程・顧客管理 | 現地の状態確認、清掃作業、仕上がり確認 |
| 介護・福祉 | 記録作成の補助、シフト、事務 | 身体介助、対人支援、現場での状態確認 |
| 自動車 | 予約管理、診断情報の整理 | 点検、整備、施工、実車の安全確認 |
| フィットネス | CRM、運動メニューの下書き | 店舗設備の提供・保守、対面指導 |
| 不動産 | 資料作成、物件説明の補助 | 現地案内、地域営業、契約に伴う確認・対応 |
同じ店舗でも、どこに価値を置くかで見方は変わります。情報を渡すだけのサービスなのか、顧客ごとの状態を判断して実行するのか、継続して通いたくなる体験を提供するのか。物理作業が残るだけでなく、顧客がその品質にお金を払う理由まで確認したいところです。
また、現場にも機器やロボットを組み合わせた自動化はありえます。「生成AI単体で難しい」ことは「どの技術でも自動化できない」ことではありません。設備導入の費用と、なお人が引き受ける仕事をセットで見る必要があります。
AI時代に強いのは「AIを使わない店舗」ではない
検討したいのは、リアル事業とAI活用を組み合わせる設計です。たとえば、本部が広告文案、問い合わせの一次整理、採用情報、CRM、売上分析、教育資料、マニュアル検索、需要予測の補助を担い、加盟店が接客、現場作業、店舗運営、地域営業に時間を使える仕組みが考えられます。
ただし、これは理想的な役割分担の例です。本部がAIを導入したと聞くだけでは、加盟店の負担が減るかは分かりません。既存システムに接続できるか、二重入力が必要か、誤った回答を誰が直すか、現場が使える教育があるかで結果は変わります。
面談では「AIを使っていますか」より、「どの作業が、誰の担当から、どこへ移りましたか」と聞くほうが具体的です。加盟店が導入費用と確認作業だけを引き受け、本部にしか成果が残らない設計でないかも確認します。効率化の利益が、ロイヤリティやシステム費用にどう反映されるかを見ることも必要です。
AIの回答を確認する担当が決まっていれば、現場の手戻りを抑える助けになります。顧客への約束や価格、商品の状態など、誤りが取引に影響する場面では、人の確認まで含めて運用を設計します。AI利用の有無より、日々の仕事がどう改善されるかを判断材料にしましょう。
それでも「店舗FCなら何でも強い」は間違い
AIに代替されにくいことと、利益が出ることは別問題です。 人が現場で働く価値が残っても、売上から人件費、家賃、仕入れ、ロイヤリティ、設備費などを賄えなければ事業は続きません。代替されにくい作業が、そのまま高い人件費依存を意味する場合もあります。
高人件費、高家賃、差別化不足、商圏縮小、過剰設備投資、本部のDX不足、価格競争は、AIへの曝露とは別に確認すべきリスクです。顧客が来る理由が弱い店舗は、現場作業が必要でも競合に価格で比較されます。省人化設備の導入で作業が減っても、投資負担や保守対応が増える可能性があります。
売上モデルを見るときは、利益という言葉だけで判断せず、何の費用を含む数字なのかを確認します。オーナー自身の作業時間が含まれないモデルなら、同じ働き方を続けられるかを考える必要があります。AI活用で時間が減るという説明にも、導入前後の対象業務と、計測の条件を求めましょう。
AI時代のフランチャイズ選びで確認したい5項目
1. 現場でしか提供できない価値があるか
顧客が買うのは、情報、作業、体験、継続支援のどれでしょうか。対面である理由と、他の店でもよいとは思われない理由を分けて聞きます。「地域密着」という言葉だけでなく、誰のどんな困りごとを解決し、再来店や紹介につながるのかを確認します。
2. AIで本部・店舗業務を効率化できるか
広告、問い合わせ、採用、教育、顧客管理などの担当を一覧にし、本部支援の範囲を確認します。利用料、初期設定、研修、データ入力、人の確認も仕事に含めます。実績がなければ削減時間を仮定せず、試用や現場説明で確かめられるかを聞きましょう。
3. 人件費依存が高すぎないか
繁忙時と通常時に必要な役割、欠勤時の代替、採用と教育を誰が担うかを聞きます。AIで事務が減っても、接客や作業の人数が同じなら、人件費全体が大きく減るとは限りません。オーナーが穴を埋める前提なら、時間と休める体制も収支と並べて確認します。
4. 地域需要が継続するか
立地の人口や生活動線、顧客の利用頻度、競合、商圏の変化を確認します。AIが直接代替しないサービスでも、顧客数や支払意欲が弱まれば売上は下がりえます。全国で需要があるという説明と、出店予定地で需要を確かめた資料を区別することが大切です。
5. 収益モデルと運営条件を確認できるか
売上、利益、手元に残る資金を混同せず、モデルの対象店舗、期間、費用内包、人員、オーナーの現場参加を聞きます。AI導入を前提にした計画なら、導入費と運用費、使えない場合の体制も確認します。未確認事項が多いときは、魅力的な将来像だけで契約判断を進めないようにしましょう。
まとめ:AI時代に店舗をどう評価するか
AI時代に店舗が自動的に勝つわけではありません。研究から考えられるのは、デジタル化できる部分を効率化しつつ、現場で実行する価値を持つ事業が、相対的に評価される可能性です。その見方を特定業態の利益や成功率へ直接置き換えることはできません。
FCを選ぶときは、本部のAI導入方針と、加盟店に残る仕事を同じ紙に並べてみてください。効率化したい作業、顧客が求める現場価値、その両方を支える費用と人員が見えて初めて、事業として検討できます。日本の地域需要や運営条件は、海外の職業研究とは別に確かめる必要があります。
どの業態・ブランドにどのような加盟条件があるかは、FC探の99ブランド比較で確認できます。
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- 7業態で考える情報処理と現場価値の違い
- 本部のAI活用と加盟店の役割分担
- 利益と代替しにくさを分けるリスク整理
- AI時代のFC選びで確認したい5項目
参照した研究・一次資料
- ILO / NASK — Generative AI and jobs: A 2025 update(2025年5月20日)。世界の潜在的な生成AI曝露。2025年初めの技術を基にした評価。研究概要 / 原論文。
- OECD / Marguerita Lane — Who will be the workers most affected by AI?(2024年10月31日)。主要分析は欧米22か国。曝露と、2012〜2022年の過去の雇用動向を区別。原典。
- IMF / Kristalina Georgieva — AI Will Transform the Global Economy. Let’s Make Sure It Benefits Humanity.(2024年1月14日)。世界・先進国等のAI曝露と補完・代替を解説。原典。
- Brookings — Generative AI, the American worker, and the future of work(2024年10月10日)。米国の職業・作業データとGPT-4の評価を用いた分析。身体を持たない生成AIという当時の前提と限界を含む。原典。
出典確認日:2026年10月2日。表とFC選びの5項目は、これらの研究を踏まえた編集部の整理です。研究結果そのものや、特定ブランドの収益保証を示すものではありません。
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